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夜会話-リーハ・ナスル
夜会話 リーハ・ナスル ◆
第2話 ◆
リーハ:(風が吹いてくる……
風に乗ってバンナの実の匂いがする)
確か、この近くに昔、バンナの種を
埋めたはず……あっ
【ナスルがバンナの実を食べている】
ナスル:お、バンナの実のあるところ
リーハありだな
リーハ:もう、何それ。ひどいなぁ
ナスル:はははっ、おまえにもよく熟れた
やつを取ってやるから待ってろ
【ナスルがジャンプしてバンナの実を取る】
ナスル:ほらよ、食え
リーハ:ありがとう
【リーハがバンナの実を食べる】
リーハ:この樹、私とアルドが
島をもらってマアバドゥを出る前に
植えたのよ
ナスル:そうだったのか。全然知らなかった
リーハ:あの時は、マアバドゥがこんな風に
なるなんて思いもしなかった……
些細な争いはあっても、とても
平和で……みんな幸せだった
ナスル:ああ、そうだな
おまえたちがいた頃には、召喚使の
やつらも来なかったからな
せいぜい嵐で屋根が吹っ飛んだ
とか、海が時化で魚を捕れないとか、
それぐらいのことだった
リーハ:召喚使が来てたときは、今より
もっと大変だったの?
ナスル:ぶん殴りたくなるほど不愉快な
召喚使の相手は大変だったが
今の状況だって楽なもんじゃねえし
うーん……なんとも言えねえな
リーハ:同じくらい大変だったのね
ナスル:いや、較べられねえよ
それぞれ違う形でむかつく状態
だったからな
リーハ:平和に……なるといいね
ナスル:大丈夫だって
ちゃんと平和にしてみせるから
大船に乗ったつもりでいろよ
リーハ:ありがとう、ナスル
ナスル:成人の儀ができなかったのは
残念だけどよ、何とか解決したら
ぱーっとやろうぜ
リーハ:うん
ナスル:ほら、そろそろ眠っとけよ
俺は遅番のやつが来るまで
見張りに立ってるからな
リーハ:解った。気をつけてね
ナスル:おう、じゃあな
ちゃんと平和にしてみせるから、安心して眠りな
第4話 ◆
リーハ:(うーんと……
こんなもんかしらね……
(神域なんてめったに来られない場所
だし、ちゃんと見ておかないと……?)
【ナスルが来る】
ナスル:お、リーハじゃねえか
眠れねえのか?
リーハ:んー、そこまでじゃないんだけど
ちょっと神域を見ておきたくて
そういえば精霊王の御座所も
もう少し見ておけばよかったなあ
ナスル:ははっ、ジイサマには言うなよ
日が暮れるまで説教されるぜ
精霊王への敬虔な気持ちが
足りねえってな
リーハ:そうね、よくお説教されてたわね
朝ナスルの家の前を通って、昼に
戻ってきたときに、まだ叱られてたわ
ナスル:うげっ、そういうかっこ悪い
ところは憶えてるんだなあ
リーハ:あはははっ
ナスル:まぁ、そいつはともかく、早いとこ
寝ちまいな。明日も強行軍だ
リーハ:そうね。そうするわ
ナスル:俺も戻るから、行こうぜ
お前もちゃんと、休んどけよ
第6話 ◆
リーハ:(私とアルドがマアバドゥに
行くまで、ここにいたのよね)
(そんなに長くはなかったけど、
楽しく遊んだ気がする……)
(ここの庭に生えたバンナの実が
おいしかったのよね……)
今もちゃんと生えてるかな?
【ナスル参上】
ナスル:おっ、こんな時間にどうしたんだ?
リーハ:何となくなつかしくなって
庭を見てたのよ
ナスル:ああ。リーハたちは少しの間
ここにいたんだよな
リーハ:うん、マーディンさんは私たちの
居場所を確保するために、あちこち
出かけてて……
ここで、アルドと2人で
遊んだり、お父さんのことを
考えたりしてた
ナスル:あ……おまえのオヤジさんも
亡くなっちまったんだよな……
リーハ:……私の力が暴走したせいで
死んじゃったのよね
あの頃は、それが自分のせいだって
気付かなかったけど、私のせいだわ
ナスル:違う!!
それはおまえの思い違いだっ
リーハ:え……?
ナスル:どう考えたって、悪いのは例の
胸くそ悪い計画だろっ
おまえもアルドもオヤジさんも
全員、被害者だ
自分のことは、恨んでやるなよ
周りにいるやつは、見てられねえよ
リーハ:あ……
ナスル:つうか、さっさと寝ちまえって!
今すべきは休むこと、なんだろ
リーハ:そうね。もう寝ないとね
おやすみなさい、ナスル
ナスル:ああ、また明日な
おまえは悪くなんかねえからな
第8話 ◆
リーハ:(ああ、何だか疲れたわ。陰の気に
満ちたところでは力が奪われるって
こういうことなのね)
【リーハが倒れ込みそうになるのを、ナスルがどこからともなく現れて支える】
ナスル:おいっ
リーハ:あっ……ナスル
【ナスルがリーハを放す】
ナスル:何をこんなところでぶっ倒れようと
してんだよ。さっさと寝ろ
リーハ:そうは思うんだけど、何だかあの
施設のことを考えると、気持ち悪く
なっちゃって……
ナスル:気持ち悪くて眠れねえんだな?
リーハ:うん……
ナスル:そういうときは、まずバンナの実を
1個食ってみるんだな
リーハ:ナスル、もしかして私には
バンナの実を食べさせておけば
元気になると思ってる?
ナスル:そこまでは思ってねえけど
お前がバンナの実を食えなく
なったら、よっぽどの重症だしな
リーハ:もう、人を食いしん坊みたいに言って……
ナスル:とか言いながら食べたいんだろ?
ほれ、やるよ
【ナスルがバンナの実を見せる】
リーハ:本当に持ってたなんて
どうしたの?
ナスル:いいから!
ほらよ、食ってみろって
リーハ:はーい……
【リーハがバンナの実をほおばる】
リーハ:……あ、おいしい……
ナスル:よし、これならちゃんと明日も
元気で起きられるさ
食ったら中に戻ろうぜ
リーハ:はーい
ナスル:元気になってくれてよかったぜ
あんまり心配かけるんじゃねーよ……
第10話 ◆
リーハ:(召喚使の人たちって何だか
すごく疲れちゃう……)
(召喚獣やカウスクザフだからって
あんな風に見る目が変わるなんて)
何だか……世界が違っちゃってる
みたい
【ナスル、忍び寄る】
ナスル:何の世界が違ってるって?
リーハ:ひゃっ!!
ナスル:はははっ、小難しい独り言言ってる
から何かと思ったぜ
リーハ:もう、ひどーい
ナスル:まぁ、でもな……あんまり気に
すんなよ
多分、これからもこんなこと
山ほどあるからな
リーハ:ナスル、召喚使が嫌いなんだって
思ってた……平気なの?
ナスル:嫌いなのは間違いないぜ
だけど、だからっていちいち頭に
血ぃ上らせてたら、もたないぞ
リーハ:ナスルって、大人なんだ……
私、みんなのことをあんな風に
思われてると思ったら……つい
ナスル:俺たちはカウスクザフだろうが人間
だろうが召喚獣だろうが関係ないって
みんな、マアバドゥの子供に
それは変わらねえよ
だから、リーハ……
泣くなよ?
リーハ:泣いてなんて……ないけど
ナスル:ははっ、悪い……つい子供の頃を
思い出してさ
リーハ:えっ?
ナスル:おまえたちが初めてマアバドゥに
来たとき、おまえはアルドを
守ってがんばろうとしてた
誰にも頼らず、笑顔を見せて……
笑ってる顔を見るたびに、いつも
痛々しくてな
思ってたんだ。こいつは心の中で
泣いてるんだって……子供なのに
自分しか頼れないと思ってるって
リーハ:あ……
ナスル:泣き言はいくらでも聞いてやる
お前を苦しめるやつがいたら
ぶっ飛ばしてやる
辛いときには大泣きしたっていい
だけどな、心の中で泣いたり
するな
リーハ:ナスル……ありがとう
でも、今は平気
でも、ほんとに辛くなったら
泣いても……いいかなぁ?
ナスル:もちろんだ
リーハ:あっ、その……そろそろ寝るね
おやすみ、ナスル
ナスル:おう、おやすみ
もう心の中で泣くんじゃねえぞ
第12話 ◆
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夜会話-リーハ・ナスル